2001年JICA専門家派遣(手すき紙の技術指導)において、特に今回はブータン通商産業貿易省の要望で東ブータン地域タシヤンツェ県内のレショー紙製造者を一同に集めてのワークショップを開催する事となりました。
タシヤンツェ県との協議の中で、今回のワークショップのプログラムの内容(レショーとツァショーの道具づくりとレショーの製造工程の技術指導)や今後のレショーのマーケット等を話し合い、そして、今後タシヤンツェ県で原料栽培や処理(楮・三椏・トロロアオイ等)が出来る人材、製品開発が出来る人材の養成を図りたいとの要望がありました。
この県では今、森林を利用した国立公園(ナショナルパーク)の建設が行われており、原料等の栽培も今後この計画の中に取り入れる可能性もあります。
今回のワークショップをはじめ、今後の手すき紙の確立するためにタシヤンツェ県は全面的に応援する気持ちを持っており、品質が向上した伝統的なレショー紙や紙商品(封筒、便箋など)を県で出来る限り使用したいとのことでありました。
今回のワークショップの受講者は22名でした。
2001年ワークショップ記録

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レショー紙を製作している人からの紙サンプルを拝見し、サイズや品質のデータを作成する。サンプルはかなりの相違がみられ、レショー紙の特徴を生かしながら今までの教典をはじめ、ラッピング、ステーショナリーなど目的に合う紙づくりをする必要がある。品質や厚さが一定でなければ市場も限られる。サンプルを見てほとんどの人に言えることは原料処理があいまいで、煮熟と叩解が不完全、抄造に使う枠の布の張りが弱く、そして厚さに均一性がなかった。  
 
       
 
オープニングセレモニーから始まり、ジュンシ紙工場の日本式製造方法のビデオ、
マンガラ紙工場の製造方法の静止画、トロロアオイの栽培方法の静止画等を見せ、
石州和紙のブックレットでのガイダンスを行う。その中の日本の楮紙・三椏紙・ 
雁皮紙のサンプルを見る研修員の驚きが印象的であった。           
 
       
 

セレモニーとガイダンス後、ツァショーの竹簀づくりを行うためにデモンストレー
ションと体験をさせ、ワークショップ用に必要な原料やその他資機材を購入する。
漉き舟とツァショー紙用桁の製作、竹ひごづくりと竹簀編み、レショー紙用枠への
布張りの実習を行った。                          

 
       
 
 
 
       
 
 
 
       
 
           
 
       
 
 
 
       
 

紙漉実習は原料処理から始め、原料そぞり、原料裂き、煮熟、水洗、塵取り、叩解、
レショー紙の紙漉きと木枠による天日乾燥、ツァショー紙の紙漉き紙床移し、圧搾、
漆喰壁による自然乾燥を行った。                       
修了式にはタシヤンツェ県知事とゲストが参列し行った。今回のワークショップ受講
者22名に修了証書を県知事より手渡す。この修了証書は今回のワークショップで
いたレショー紙を使用した。                         

 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     
     
     
 
     

 

コメント

始まる前はこのワークショップがすべて終了出来ないのでは心配でしたが、研修員の積極的な協力があり、計画通りに終了したことがまずは良かったと思いました。
今回のような企画は初めてであり、このようなワークショップが全国各地でも開催できればとブータン通商産業貿易省は考えているようであり、良い企画であったと思いました。
研修を積極的に受け、張り切っている姿を見てるかぎりでは今後も頑張ってくれると期待していますが、しかしながら今回のワークショップをいかに生かしてレショー紙を製造してくれる人が何人いるのかが心配です。
市場がないことも影響していますが農業とかの副収入もあるのでそんなに危機感を持っているように見えませんでした。三年前の調査に比べ生産量も半分になっているようで、今後、タシヤンツェ県でも多いに使用するとなるとある程度品質が良く、統一性のレショー紙を作っていかないといけないと思いました。
今回は全員が一カ所で製造したため、ある程度の統一したレショー紙が出来上がりましたが各個人の仕事場ではこのようにはいかないと思います。今までは原料処理が未熟で、煮熟と叩解が不完全で、布の張りが弱いし、厚さに均一性がないような状態から脱皮するためには共同の工房で原料処理、煮熟、叩解、抄造、乾燥を行えば解消できるのではないかと感じます。
又、欲張れば原材料の共同購入、レショー紙の共同販売が出来る組織化、そして品質の良い紙を統一させ、そして製品化が出来るように、そのためには製造機能をすべて備わった工房で最低6名くらいが一度に製造できるものが必要ではないかと感じました。
今後の各製造者への技術指導も必要ではありますが、原材料の確保(ダフネ、トロロアオイ)の栽培計画と合わせ、タシヤンツェ県を中心とし、製造者の意見を取り入れて計画案を練ってみてもらいたい気持ちであります。
今回のワークショップで研修を受けた人の全員が品質の良いレショー紙を一枚でも多く漉いてくれることを強く願っています。

 

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