手すき紙の歴史は中国において１０５年に蔡倫によって樹皮紙（靱皮繊維を用いる紙漉き）が発明され、これら紙漉き製法は漢時代から改良が重ねられ諸外国との経済文化交流により東・西・南の地域に伝えられました。
詳しくは３～６世紀に朝鮮・ベトナムに、６１０年には曇徴によって朝鮮から日本に、唐時代（６４８年～６５０年）にはネパール・インド・パキスタンなどの南アジア及び東南アジア諸国に、７５１年にはシルクロードをへてアラブ地域（拠点として現在のウズベキスタン共和国・サマルカンド）に、７９３年にサラセン帝国・バグダッドに、８２５年にアラビア・ダマスカスに、９００年にエジプト・カイロに（紀元前２５００年、書写材料として使用された世界最古の紙として知られているパピルス紙はこれにより完全に衰退、ペーパーの語源であるＰａｐｙｒｕｓ－Ｐａｐｅｒ）、１１５１年頃モロッコ・スペイン・イタリアに、１１８９年にフランスに、１３２０年にドイツに、１４９４年にイギリスに、１５７６年頃にロシアに、さらにこの頃からヨーロッパからメキシコに、１６９０年にアメリカに、１８０３年にアメリカからカナダに手すき紙の製法は伝えられました。
サマルカンドペーパーは７５１年に中国の唐帝国の領土であったサマルカンドがアラブ軍との戦い（タラスの戦い）に敗れ、その時に捕虜となった中国人から紙漉きの製法を学び始まりました。
近年の桑の皮を主原料とした製法とは全く異なったものであり、その頃は麻のぼろを主原料に紙漉きが行われ、国内だけでなくヨーロッパにも輸出されていましたが、ヨーロッパでは輸入に多額の費用がかかることからヨーロッパ本土で紙漉き工場の建設が進みました。
このようにサマルカンドはアフリカやヨーロッパへ手すき紙のみならず絹製品などの物資の中継地点として重大な役割を果たしておりました。
サマルカンドペーパーの用途として特にコーラン（イスラム教の経典）や外国語の翻訳本に用いられていました。サマルカンドペーパーが衰退した背景のことは記録などが残されておらず不明でありますが、ウズベキスタンの伝統工芸であります細密画（ミニアチュール）の用紙には１００～１５０年前の古文書等のサマルカンドペーパーが使用されているところから１９００年頃（旧ロシア領土となった頃）までは製造されていたと思われます。
ウズベキスタン共和国地図
